すると、聴診器を僕の胸にあてながら、「東京医科歯科大学の藤田紘一郎先生が言っていたけれど、セロトニンは脳の中で作られるのは全体の3%程度で、あとの97%は腸内細菌が作っていると言っていたよ」と話し始めた。
なんだか、とっても、話好きのおじいちゃん医師だけどさ、ちょんと僕の胸の音を聴診器で聴いている?と突っ込みたくなった。
そんな僕の気持ちなんて無視して、「でさ、メキシコは日本よりもずっと貧困だろ。でも、うつ病で自殺する人は日本の10分の1なんだよ。それはメキシコ人は食物繊維をたくさん食べていて、腸内細菌が活発になりセロトニンをたくさん作っているからだと藤田先生は言っていたよ」。
なるほど、と僕は思い、それなら、ビオフェルミンとかヨーグルトをたくさん食べようかなと思いつつも、「先生、本当に聴診器で僕の胸の音、聴いている?」と何度も突っ込みたくなった。
でも、まぁ、いい話をきいたな。
きっと、明日からは、食物繊維とビオフェルミンとヨーグルトを食べ、トリプトファンが入っているサプリメントを飲みながら、研修活動をしているな、と僕は思ったのでした。
その内科医は最後までおしゃべりを止めずに聴診器を僕の胸にあてていた。
きっと話しながらも胸の音は聴こえるという特技を持った先生なんだと自分を納得させた僕でした。